私がこれまで接してきた国内外の一流の人達は目標を設定するだけでなく、その内容を自ら進化させています。
今回は、目標を設定する具体的な方法について、そしてさらに踏み込んで、その目標を継続進化させていく「PDCAノート術」を説明します。
では、はりきっていきましょう!
目標設定のフレームワーク「SMART」で重要なポイント
まず、目標を設定する具体的な方法について触れてみたいと思います。
ここでは、知ってる人も多いと思いますが、世の中でよく言われる汎用的なフレームワークを使います。目標設定の際によくSMARTというフレームワークがありますが、それは以下の5つです。
・S: Specific(具体的に)
・M:Measurable (測定可能な)
・A:Acheivable(達成可能な)
・R:Realistic(現実的な)
・T:Timely(期限が明確な)
ご存知の方が多いと思いますが、この5つは目標設定をする際に意識すべきポイントです。
私が働くグローバル企業は、年始の目標設定でこのSMARTを意識活用するように社員全員にガイドしています。使い古されたフレームワークですが、今でも使えるフレームワークです。目標設定で何のフレームワークもなく漠然と目標設定するならSMARTをぜひ意識しましょう。
その中で、特に重要なのがMeasurable(測定可能な)とTimely(期限が明確な)です。
どれだけ目標を掲げても、それが測定可能でなければうまく行ったかそうでなかったかを把握し、適宜目標を修正して行くことはできません。
そして、期限が明確でなければいつまでに達成すべきか先が見えない(ずるずるいってしまう)、また細かい軌道修正もできません。
例えば、英語学習でこれについて考えると
【目的】
- グローバルで自分が立てた企画を発表し、それが認められ、多くの海外人材に助けられながら日本発グローバルに(どんな小さなことでも)変化を起こす
- 同時に、ここで出会った仲間を大事に、グローバル人脈を築いていく
【目標】
- まずは日本語で、3ヶ月以内にグローバルが関心を持ってくれる企画を立てる。その後1ヶ月で企画資料を英語化。その過程で、英語の企画の書き方を覚える(4月までにネットで参考になる企画資料をガンガンとダウンロードし英語同時学習)。GWにアメリカに行き、本場の英語に触れ、本番のイメトレを行う
- 発表を見据えた英語プレゼンを練習。その過程で関連用語の暗記、QAで恥をかかないように徹底的に通勤時間を使って英語でシャドーイング(6ヶ月後)
- グローバルに送る英語メールを作成。企画の論点を簡潔に英語でまとめる(6ヶ月目以降の最初の月)
といった感じです。実際には、こうした文章ではなくノートや手帳に表にして管理していきます。
「できること」ベースの目標設定はNG
さて、あなたは今年どんな目標設定をしたか、覚えていますか?
上司が立てた目標にただうなずいただけの方もいれば、これくらいなら達成できるはず、と控えめな目標設定をした方もいるかもしれません。
まずは、いつもの目標設定の流れを振り返ってみましょう。
私も、自分の目標設定とともに部下の目標設定と面談も行っています。かれこれ20年以上、100名以上の部下と目標設定と面談をしてきました。面談の2週間くらい前になると目標設定用のフォーマットが送られてきます。記入後、上司との面談をセットし30分~1時間程度でその年度の目標設定内容を合意します。それをもとに中間、期末、年度末の人事考課がなされる。会社や立場によって違いはあれどこんな流れが一般的かと思います。
ここで私が着目するのは、会社全体の目標から分解された目標(Target)よりもむしろ、個人個人が設定する目標です。
よくあるのがその目標を達成するためにその人がどんなステップを達成するか(KPI:定量目標)、そしてそのためにどんなスキルアップを目指すか?(定性目標)です。
※ KPI: Key Performance Indicator (詳しくはこちら)
私が毎年行う目標設定の中で一般職クラス、課長クラスそして部長クラスの部下の目標を見て思うことは・・・「もっとまともな目標が設定できるはず!」ということです。
さすがに、部長クラスとなると一見もっともらしい、いかにも挑戦している風な目標が書かれています。でもよく見てみると、「去年の目標の延長線に過ぎない」ということがとても多いんです。つまり、やれば誰でも達成できるような目標設定になっているということ。
目標達成できずに評価が下がることを恐れているのがミエミエなんです。
自分の得意分野に限った目標を設定してくるケースが多いんですね。
例えば「目標達成と同時により上位層との関係を築く」、あるいは「顧客との長期的関係を構築」こんなところです。ちょっと頑張ればできそうなことや現状維持でクリアできることを書いてるだけだなって如実にわかるんです。
「昨年と同じ」では年々実質の評価が下がっていく
この問題点は、単に精神論で片づけられることではありません。
忘れてはならないのは企業では成長が前提とされているということ。
単に去年と同レベルのことをクリアしただけでは100点はもらえません。同じ期待値の仕事をクリアしただけなら、上司としては90点、あるいは80点という評価をせざるを得ないのです。
インフレしているのに自分の価値は変わっていないようなものです。
会社も成長していれば、評価者である私も成長しているのです。
これは、組織にとっても不幸だし何より、本人にとって不幸なこと。こういう目標設定を繰り返していては自分自身の将来にも繋がります。
自分に欠けている要素を「ノート」が教えてくれる
そこで考えるべきことは、今の仕事の延長線上ではなく違う視点で目標を設定することです。つまり目標を継続的に進化させることです。
じゃあ、どうやってその視点を見つけるのか?
それは「あなたの弱点を元に考える」ことです。
例えば、
- 「既存」顧客との関係は作り安いけど、「新規」だと苦手
- 「新規」はガンガン関係を作れるけど、「既存」顧客との関係維持が苦手
- 「自分」の実行力は上がったけど、「他者」と一緒での実行が苦手
- 「社内」業務はこなれてきたけど、「顧客」対応は苦手
- 「部下」の巻き込みはできるけど、「上司」の巻き込みが苦手
例えば昨年◯◯で100%達成したとして、それを翌年は
- (既存だけじゃなく)新規獲得にこだわる
- (新規だけじゃなく)既存顧客との関係強化にこだわる
- (自分だけじゃなく)他者との実行にこだわる
- (社内業務だけじゃなく)顧客対応にこだわる
- (部下だけじゃばく)上司の巻き込みにこだわる
というように、これまでと違う視点を目標に組み込むのです。
ここで登場するのが、いつものノートです。
みなさんがノートに日々書き連ねる内容にこそあなたの弱点が詰まっているからです。以下に説明しますが、私は「PDCAノート」と呼んでいます。
実践1:日々の小さな目標を蓄積
目標設定の際に何より役立つことが、普段の仕事で上司から掛けられる言葉や日々の業務で感じたノートに隠れています。
例えば、ある新規顧客向けに行った先輩のプレゼンが自分より遥かによかった場合。あるいは、新規顧客への初回訪問での関係作りがうまい同僚がいたとします。
関係がすでにできている既存顧客に対してはできていても、新規顧客になるとできないことがわかり、自分の課題として認識できたわけです。
「既存だけでなく新規顧客向けのプレゼンもできるようになる」
「新規顧客への初回訪問で効果的に関係作りできるようになる」
このように、ノートに箇条書きを残しておきます。
そして、また別の日に上司と共に新規顧客訪問をしたときのこと。訪問後、喫茶店で反省をしていたら「どの話も自分が主語になっていて顧客視点になっていない」とダメ出しされたとします。(既存顧客だったら相手のことがよくわかっていたのでできていたのに…)
これもすかさず、ノートに書き留める。こうしてノートを活用しながら「PDCAサイクル」を回すことができるようになります。
こういう「小さな目標」を次の目標設定の時期まで日々蓄積しておいてください。
なお、PDCAは「P:Plan(計画)」→「D:Do(実行)」→「C:Check(振り返り/確認)」→「A:Action(軌道修正/アクション)」の略で、このサイクルを回すことが改善のプロセスを回すことにつながります。これもまた戦略フレームワークです。
つまり、計画(あるべき姿/目標)を明確にし、その上で実行(現実)し、その後に振り返り確認(あるべき姿と現実のギャップを把握)し、改善のアクションにつなげ、それをさらに次の目標として計画するプロセスを回し続けるのです。シンプルですが、その分効果的なフレームワークです。
実践2:弱点をベースに目標を設定
目標設定の時期がやってきたらいよいよ、蓄積してきた「小さな目標」が役立つときです。
今までやってきたようなできることの延長ではなく、「できなかったこと」、つまり、あなたの「弱点」をベースに目標に組み込んでください。
こうして導き出された目標は絵空事ではなく、日々のあなたの仕事の実績の中で生まれたもの。おのずと、 身の丈に合いながらもあなたに不足している要素を補ってくれる「進化目標」になるんです。
つまり、義務的に達成する目標ではなく、目標を達成することであなた自身の成長につながるということ。
さらに、このような目標設定は会社との間でオフィシャルに行うものなので達成が難しくなった場合、上司は助けに入ります。あなたの自発的な挑戦(弱点)だからこそ オフィシャルなプロセスで相談に乗ってもらえるわけです。
この成長術を、活用しない手はありません。
去年までの延長線上の目標はこうしたチャンス、財産をみすみす捨てているのと同じなんです。
低めの目標を設定しておけば評価がプラスになると考えてしまいがちですがそれは長い目で見れば成長を妨げるものでしかありません。それ以前に、期待値の低い目標は達成したとしても評価につながらない。
これは根性論ではなく、事実として覚えておいてください。
具体的な目標設定の例
わかりやすいものは数字で表せる目標です。
「売上目標○万円達成」、あるいはKPIとして設定される顧客訪問回数や契約数などの数字もありますね。それに加えて、今までの蓄積の中から導き出した今まで挑戦していない要素 を盛り込んでください。
例えば、今までの顧客が一般職クラスの相手だった場合。
「上層部との関係を構築する」という目標はあなたにとって未知の分野となります。
あるいは、既存顧客との関係づくりに長けている場合は「新規顧客10%増」という目標が有効になるはずです。
達成すべき数字の高低を気にするだけでなく、新しい要素をそこに加える 。これをあなたの会社のフォーマットに沿って肉付けすれば非常にプラスになる目標設定ができるはずです。
日々の業務で上司からなにかを指摘されたり同僚の仕事に劣っていると感じることがあったらそれは次の目標設定のチャンス だと捉えてください。
こうして立てた目標は目標設定のシートを配られて提出期限までの2週間ででっち上げる目標とは雲泥の差があるはすです。
目的はWHYで考え、目標はHOWで考える
ここで「目的」と「目標」の違いを整理しておきます。
自分が立てた目標設定に対して「何でそうするの?(WHY)」に答えるのが「目的」です。目的は自分が目指す先(目指す山頂)で、目標設定の「判断基準」と考えましょう。
その目的に対して「どうやってそこに近づくの?(HOW)」を答えるのが「目標」です。それはSMARTに設定していきましょう。
目標は先述したSMARTにPDCAサイクルを回すことで、どんどんと自分らしく磨きがかかり、その回転の速さが他者との競争優位の源泉になります。
そのためにノートを活用していきましょう。これが目標を進化させていくPDCAノートの発想です。
なお、目的設定に関してはこちらのブログコラムも参考にしてください。(コラム:目標設定が上手い人と下手な人のノートの違いとは?海外一流の「目標ノート」はビジュアルが違う!?)
PDCAノートで目標を進化させる
ノートに一行ずつ、その日の成功体験や反省を書きましょう。決して大袈裟な成功体験や反省でなくて良いです。小さな成功体験、少し反省したことを一行ノートに記録することがポイントです。
そして小さな成長/小さな反省→ 次の小さな目標化(行動につながりやすい)、あるいは反省→次のカイゼン目標(小さなカイゼンだからダメージも小さい)へとつなげていくのです。そこでひらめいたアイデアをノートにドンドンと書き込んでいきましょう。こうして目標を軌道修正しながら進化させていきます。
この方法は、ただ闇雲に目標設定するよりもはるかに効果的です。
なぜなら、行動結果は自分の現実であり、自分の資産であり、それを「次のアクション」につなげたほうが、思いだけで目標設定や計画をたてるよりもはるかに実直で、効果があるからです。
ポイントは、日々の気づきを記憶ではなくノートに「記録」に残すこと。それを「次のアクション」につなげ、「振り返り」の中でより上位の目標(挙句の果てには人生戦略にまで)につなげることです。
目標はPDCAサイクルを回しながら継続進化させる
一度立てた目標は環境や状況変化において適宜修正していくものです。
その目標達成時期を早めたり目標内容を高めたり、あるいは目標時期を延ばしたり目標内容を落としたりしていきます。目標内容を落とす際は、その目標達成をいかに早めるかを考えましょう。その経験が結果的に目標設定を進化させることにつながります。
繰り返しますが、意識すべきことは「目標を進化」させていくという発想です。
目標の期限や数値を修正するだけでなく、目標そのものの内容をより高いレベルに設定していくのです。
例えば、先程の例で説明した「3ヶ月以内にグローバルが関心を持ってくれる企画」という目標は、「1ヶ月以内に企画作成のノウハウを定型化(再現性が作れる)し、企画ストーリーを意思決定者レベルにうまくプレゼンできるようにスキルアップする」というように目標そのものの内容を進化させます。
なお、PDCAのCから回す技術については、拙著「初速思考 30代で一気に突き抜ける人の集中戦略(日本実業出版社)」で言及しています。こちらもぜひご参考に。
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お互い切磋琢磨していきましょう。