日本人が知らない世界と日本の見方 本当の国際政治学とは(中西輝政著)

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本日お送りしたいテーマは「日本人が知らない世界と日本の見方 本当の国際政治学とは(中西輝政著)」、です。

ゴールデンウィークは読書を楽しもう! ということで、今日も読書特集をお送りします。GWは一日1冊ペースで読書をしています。GW中の読書はスキルアップが多いようにみえますが、実は「歴史」や「哲学」といった内容がとても好きで、こうした本を読みあさっています。本日はその中の一冊です。(他に3冊、このコラムの文末でおすすめを紹介します)

国際政治学は常にその時代の国際情勢に色濃く影響されています。だから、国際政治学を少しでもかじっておくと今世の中で起きている出来事の背景ができるようになります。国際政治は私たちの生活や人生設計にも関わってきます。その国際政治学のきっかけになったのは第一次世界大戦です。第一次世界大戦の中身がわかると、世界の見方が見えてきます。世界と日本の見方は「国際政治学」で見えてくるのです。

内容が豊富なので、そのさわりの部分だけ紹介します。初めて聞いたことが多くて、ここだけでも面白いです。読破はしたのですが、ブログへの書き込みが追いつかず 笑)

 

第一次世界大戦は、「国家が国家をだます戦争」だった

第一次世界大戦は、世界史上初となる「国家総力戦」。最新兵器が数多く投入され、大量破壊兵器が開発・使用され、それにより生じた人的犠牲は甚大なモノでした。

国家総力戦は、見方を変えると、国家が国家をだます戦争。戦意高揚のため、マスコミを利用して負けているのに「勝っている」と報じるのです。この代表例がヨーロッパ人なら誰でも知っている北フランスが戦場なった「ソンムの戦い」。例えばイギリス政府は「今日わが軍兵士は、勇敢な突撃を敢行して敵陣を突破し20マイルも前進した」と発表。毎日「前進した」という発表をするので、イギリスのある老人が距離を全部足したところ、とっくにベルリンの街を通り過ぎ、ドイツすら通り抜けていたという笑い話があるほどです(本書ではイギリスの「サクソン・ハウス」がその例として紹介)。ソンムの戦いでは3カ月36万人のイギリス兵が亡くなりました。

実際、イギリスやフランスは、第二次世界大戦よりも第一次世界大戦での戦死者のほうが多い。日本人にはあまり知られていないが、第一次世界大戦は西欧の歴史に大きな衝撃となって残っています
その後、国民の国家に対する不信がその後の国際政治に大きな影響を生み出します。

 

第一次世界大戦の戦争責任をめぐる論争が悲惨な結果を生み出した

第一次世界大戦のもう一つの特徴は、戦争責任をめぐる論争が悲惨な結果を生み出したこと。具体的には敗戦国のドイツやブルガリア、オーストリアに課せられた賠償金の大きさです。とうていこれらの国は賠償金を払いきれません。

むしろ賠償金を払わない(ヴェルサイユ条約を無視する)思いがある強かったドイツにとって、ヒトラーのような独裁者の登場を待つ機運さえありました。一方、戦争中に食料が枯渇し、革靴を湯がいて食べるほどの悲惨なイギリスで、イギリス政府は国民に対して「この戦争に勝てば賠償金を取り立てる、国民生活は必ず豊かになる」と伝えていたので引くにひけない。当時のイギリスは、食料の80%を海外に頼っていたイギリスにとって、ドイツ軍の潜水艦攻撃で食料が枯渇していました。何がなんでもドイツを「悪者扱い」する必要があったのです。こうした中、ドイツではヒトラーのような指導者が待望され、ナチス政権が生まれるようになったのです。

 

民主主義の体制そのものが、独裁や戦争を引き起こした原因

言い換えると、民主主義の体制そのものが、独裁や戦争(具体的には第二次世界大戦)を引き起こした原因の一つだったということになるのです。そこで、世界の国がすべて民主主義になれば戦争がなくなるのか? そもそも戦争は何が原因で起こるのだろう? ということを深く考えなければならなくなった・・・これが戦争と平和について考える国際政治学が起きた背景です。

日本人はほとんど気づきませんが、第二次世界大戦ではなく、第一次世界大戦こそが現代文明の「分水嶺」だったのです。世界が現在のようになった最大の原因は、第一次世界大戦におけるヨーロッパの近代文明の大きな挫折があるわけです。戦後のヨーロッパでは、「政府発表を信用してはならない。戦争になったら自分の身を守れるのは自分だけである。」といったニヒリズムが起きました。そのニヒリズムから戦後、第二次世界大戦の原因を作ってしまったのです。

 

政府を信じてはならない「反国家」の理念が勃発

第一次世界大戦後のヨーロッパでは当然、反戦平和の考え方が強まります。そこから出てきた一つ目の考え方が「政府を信じてはならない」というものです。こうして「反国家」の理念が生まれてくるのです。1920年代のヨーロッパは特にそれが強く、こうして「アナーキズム(無政府主義)」が生まれたのです。

二つ目に、1917年、ロシアで共産主義の革命が起きたことも大きかったです。ロシアでは国家に代わり「労働者階級」による世界を作ろう、という考え方が出てきます。これがロシア革命です。これに影響して、西欧では「自分達も同じような革命を起こせば国家が人民をいじめる政治はなくなる」、と考えたのです。

これが社会主義や共産主義の革命理論で、第一次世界大戦後、世界中で強まっていきます。最下層にいる労働者が立ち上がり共産主義革命を実現させたら、もはや搾取する階級はなくなり、国家もなくなるという思想です。ちなみに、ロシアでは各国に誕生していた共産党を「世界共産党」という一つの革命政党に統一。コミンテルンです。こうした動きはイギリス、ドイツ、イタリア、フランス、さらにはアメリカや日本でも広がります。

 

「国際連盟」が起きた背景

第一次世界大戦後、ヨーロッパで考えられた共産主義の「平和宣言」に対抗するものとして、アメリカのウィルソン大統領が出したもう一つの答えが「国際連盟」でした。国際機関が平和と戦争の問題を取り扱うというわけです。

ところがこの国際連盟、常任理事国に「拒否権」がなかった。国際連盟では、日本は常任理事国でした。そして1931年、満州事変が勃発します。満州事変に対する非難決議が賛成されたのですが、日本は拒否権がないので、満州から撤退するか、国連を脱退するか選択肢がありませんでした。もし国際連盟で日本に拒否権があれば、日本は国連から脱退せず、アジアで第二次世界大戦は起きなかった可能性が高かったでしょう。そう考えると、実は拒否権があったほうが、平和は守れるのです。

初期の国際政治学が主たる関心にしたテーマは、国際連盟のシステムで、例えば「拒否権はあったほうがいいか」という議論でした。「戦争を避けるにはどうしたらいいかを考えるのが、20世紀の学問の最大の使命である」とも言われていました。

こうして第一次世界大戦後、戦争と平和について考えることから国際政治学は始まりました。そして、初期の国際政治学は「平和教育」と「軍縮」が大きなテーマの柱でした。

その後、この書籍では、その後以下のテーマにふれています。

  • 地上どこにもない場所
  • 幻滅の二十世紀
  • アングロサクソンとは何か?
  • 一超多強の世界
  • 日本文明が生き残るために

とても勉強になりますよ。

日本人が知らない世界と日本の見方 本当の国際政治学とは(中西輝政著)

国際社会が重視する「戦争の教訓」とは、第二次世界大戦でなく、日本人に馴染みが薄い第一次世界大戦にこそあった? 長年、加盟を申請しているトルコはなぜEUに入れない? アメリカが主導した「世界のグローバル化」の流れが終焉し、「国家」の果たす役割が再び重要になってくる時代とは?――国際政治での矛盾とジレンマに満ちた実態を、「歴史的アプローチ」から受講者にまざまざと体感させる“人気の京大講義録”。アングロサクソン的な視点からの“解説学問”になりがちな従来の国際政治学の枠組みを超え、日本人の歴史的な経験や価値観を踏まえた“国家像”と“国家戦略”を指し示すことで、「世界の見方」がクリアになる一冊。幕末・明治の日本近代史、国際的な戦争の仕組み、革命というものの正体、歴史の因果関係、「一超多強」の世界秩序の構築まで扱うテーマは幅広く、飽きることがない。大人が読んでこそ楽しめる授業内容だ。(Amazonより)
他にも、こんな書籍がおすすめです。

異文化理解力(エリン・メイヤー著)

この本が私にとって「感動的」だったのは、次の二点だ。ひとつは、ビジネスにおける異文化理解に特化していること。学術的な視点が強かったこれまでの異文化理解の文献と異なり、この本は「評価」や「リーダーシップ」といった、文化の違いが生まれやすい「8つのマネジメント領域」に沿って解説している。海外で働く人はもちろん、日本にいながら外国人の上司・部下・クライアントと仕事をする人にとっても有益なアドバイス、身近なケーススタディが満載だ。
もうひとつは、「カルチャー・マップ」を使って、文化の違いを可視化していること。「カルチャー・マップ」とは、8つのマネジメント領域を縦軸に、各領域における両極端の特徴を横軸に置いた、文化の「見取り図」だ。「評価」という領域では、左端が「直接的なネガティブ・フィードバック」、右端が「間接的なネガティブ・フィードバック」となり、たとえばドイツは左端、日本は右端に位置する。このマップを使うことで、自分と相手の文化がどれくらい違うかがひと目でわかる。
グローバルビジネスが、二国間から多国間へ、リアルからバーチャルへと、その複雑性が急速に増す中、「異文化を理解する力」の欠如は、ビジネス上の重大のリスクとなりかねない。そしてリスクも大きいが、チャンスも大きい。国家機関やグローバル企業、また私たちが日々お手伝いをしているクライアントのあいだでも、「異文化理解力」を次世代リーダーの条件と定義し、強化する取り組みが次々に始まっている。現代のビジネスパーソンにとって「異文化理解力」は、まさに「必須の教養」と言える時代になったのだと思う。
田岡恵グロービス経営大学院教授  (以下、「監訳者まえがき」より一部抜粋)

世界史で学べ!地政学(茂木誠著)

新聞では分からない世界の歴史と国際情勢が、地政学の視点ならスッキリと見えてくる!
本書は、今日の世界情勢を地政学的な見方で読み解き、それを世界史の流れを用いて解説してゆくものです。
地政学とは、地理的条件が政治に与える影響を説明する学問。もともとイギリス、ドイツ、アメリカなどで国家戦略に科学的根拠と正当性を与えることを目的として発展してきました。
たとえば、アメリカは「島」、ヨーロッパは「半島」だと思って地図を見てください。
こんな視点で世界を見渡したら、いつもとは違ったように見えませんか? こうした見方で、本書は展開していきます。
本書では世界を9つの地域に分けて解説しています。現代の覇権国アメリカは、この先衰退していくのか、そしてそれはどのように? EU、ロシア、イラン、インド、中国などの地域覇権国家はどのようにして今のような力を持ったのか、そしてこの先どうなっていくのか、など、わかりやすく解説します。もちろんISやボコ・ハラムをはじめとする中東諸国のテロ問題から、ギリシア危機の背景など、現代の国際情勢の喫緊の課題も、読み解いていきます。図版をふんだんに使って、視覚的にも見やすく展開します。ビジネスパーソンならずとも知っておきたい、現代の世界情勢がよくわかる、必読の書です。

17歳のための世界と日本の見方 (松岡正剛著)

ワクワクする世の中の秘密、教えます。世界の文化・宗教・思想をクロニクルにまとめ、日本とのつながりを明らかにする。流れるようにドンドン読める人間と文化の教科書! (Amazonより)

 

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